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腰痛は職場で起こりやすい!職場で始める腰痛予防ガイド

あなたの腰痛、職場で悪化していませんか?

実は腰痛は、労働災害による業務上の疾病の中で最も多いといわれています。また、労働生産性を低下させる職業病の約6割を占めています。とくに25歳〜35歳の働き盛りの年代のなかで約35%の人が、職場で腰痛を発症しています。

腰痛は年齢性別関係なく、日頃から正しい知識に基づいた対策が必要です。

腰痛は原因が特定できないものも多く、慢性化する可能性もあります。この記事では、腰痛の原因と予防方法について具体的にお伝えします。

腰痛が引き起こされる原因は2種類

腰痛の主な原因は大きく2つに分けられます。

1. 腰椎の機能障害

引用:今日の腰痛予防対策マニュアル

前かがみの姿勢になると、通常は腰椎の中央にある「髄核」という組織が本来あるべき位置から少し後方にずれます。それが積み重なると、髄核が後ろにずれたままになり、ぎっくり腰やヘルニアを引き起こします。

例えば、前かがみの姿勢で重い荷物を持ち上げる動作は要注意です。急激な負荷がかかることで一気に症状が現れることもあります。

2. 脳の機能障害

引用:今日の腰痛予防対策マニュアル

明確な原因が特定しきれない腰痛を非特異的腰痛といいます。その中には心理的なストレスを伴う「脳の不具合」によるものがあると考えられています。

職場や家庭での負担感や悩みを抱えていると、痛みを抑える役割を持つドーパミンが分泌されなくなります。そして、健全な精神を保つために重要な脳内のセロトニンの分泌が低下し、自律神経のバランスが乱れます。自律神経の乱れは腰痛、めまい、動悸、抑うつや睡眠障害など様々な症状を引き起こすことがあります。

一方で、脳の不具合とは別のメカニズムが関与して、「ぎっくり腰」の発生リスクを高めることもわかっています。ストレスや負担感が強いと、筋肉が過剰に収縮し椎間板に負担がかかることがわかっています。心的ストレスがあると、ぎっくり腰を起こす危険性が高まるのです。

腰痛が現れた時には、忙しい毎日の中で自分のストレス状態を見つめ直すことも重要です。

職場で実践できる腰痛予防策

すぐに実践できる腰痛予防策は、以下の3つの方法があります。

  1. 正しい姿勢を意識する|パワーポジション
  2. 有酸素運動を習慣化
  3. 簡単エクササイズ|これだけ体操

それぞれくわしく解説していきます。

1. 正しい姿勢を意識する|パワーポジション

「パワーポジション」とは、力を発揮しやすく、腰に負担をかけにくい姿勢のことです。

【正しい手順】

 引用:今日の腰痛予防対策マニュアル

  1. 膝と股関節を軽く曲げる
  2. 体幹を軽く前傾させ、胸を張る

物を持ち上げる際は、対象物を体に近づけ、腰の高さで保持しましょう。パワーポジションを意識することが大切です。

正しい基本姿勢をとる為にも、日頃から筋肉トレーニングを行いましょう。

2. 有酸素運動を習慣化

ウォーキングなどの有酸素運動は腰痛予防にもストレス軽減にも効果的です。1日1万歩を目標に、無理のない範囲でウォーキングを取り入れましょう。

3. 簡単エクササイズ|これだけ体操

これだけ体操1「腰を反らす」

引用:公益社団法人 日本理学療法士協会広報誌No25

これだけ体操2「腰を横に曲げる」

引用:公益社団法人 日本理学療法士協会広報誌No25

これだけ体操3「腰をかがめる」

引用:公益社団法人 日本理学療法士協会広報誌No25

「これだけ体操」と呼ばれる簡単なエクササイズを毎日取り入れましょう。各動作を3秒間キープし、1〜2回行うだけでも効果があります。

転倒と腰痛予防も併せておこないたい方は「いきいき健康体操」がおすすめです。

腰痛は安静にすれば治るわけではない

腰痛がひどいときは絶対安静が必要だと思っている人も多いですよね。実は、神経痛を伴う椎間板ヘルニア、腰骨の腫瘍や感染、骨折など明確な疾患がない腰痛の場合、3日以上の安静は推奨されていません。

多くの人は、腰痛の痛みから安静にしてしまいますが、かえって痛みが強くなり、回復が遅れてしまうことがわかってきました。動かしながら治し、予防するのが世界標準の考え方です。少しずつ活動量を増やして、前向きに過ごすことが重要です。仕事を含む普段の生活をできる範囲で維持するように心がけましょう。

病院を受診した方がいい症状

腰痛の多くは1ヶ月〜1ヶ月半程度で自然治癒することが多いです。しかし、次のような症状がある場合、重症化する可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。

症状考えられる疾患
脚の痛みやしびれがある脚の神経が押される疾患・腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症など
発症年齢が20歳未満・腰椎分離症・分離すべり症・腰椎椎間板ヘルニア・悪性腫瘍・強直性脊椎炎
発症年齢がは55歳以上・悪性腫瘍・骨粗鬆症(特に女性)による脊椎圧迫骨折
時間や活動性に関係のない腰痛・悪性腫瘍・化膿性椎間板炎、脊椎炎・骨折
胸部痛・心筋梗塞・大動脈解離
癌、ステロイド治療、HIV感染の既往・脊椎に転移性腫瘍・免疫力低下による脊椎感染しやすくなる
栄養不良・感染のリスク増加・骨粗しょう症のリスク増加
体重減少・悪性腫瘍のリスク増加・感染のリスク増加
広範囲に及ぶ神経症状両足全体のしびれや痛み(力が入りにくいなどには注意)
構築性脊柱変形背骨自体が曲がってしまい姿勢を正すことができない状態(圧迫骨折や感染のことも)
発熱・感染・悪性腫瘍

これらは重篤な疾患の可能性があるため、上記の症状に当てはまる場合は早期診断がおすすめです。自己判断で無理をせず、早めに受診して医師の診断を仰いでください。

また、上記の症状がなくても1カ月以上痛みが続く場合や、発症当初に受診したのに1カ月以上改善が見られない場合も受診することをお勧めします。

職場でできる腰痛対策

職場で腰痛対策をおこなうには、労働衛生3管理の「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」+「労働衛生教育」を継続して実施する必要があります。

作業環境管理の改善

作業環境の改善は以下の3つがあげられます。

  • 過ごしやすい室温にする(温度)
  • 作業空間を快適にする(照明・作業床面・設備の配置)
  • 振動を減らす(振動)

それぞれくわしく解説していきます。

まず【過ごしやすい室温にする】です。寒くなると腰痛になりやすくなるため、快適な室温を保つことが大切です。温度調節が難しい場合は、多めに服を重ね着して、衣類の調節をおこないましょう。

次に【作業空間を快適にする】です。作業をするときは、十分な作業空間を確保し、適切に機器を配置しましょう。そして、足元や周囲の安全が確認できるように、できるだけ照明は明るくするのがおすすめです。

床はデコボコや段差は作らないようにして、滑りにくい床面にしましょう。また、横になって休める休憩場所があると安心です。

最後に【振動を減らす】です。建設機械の操作や車両の運転などによる腰や全身への激しい振動、車両運転などによる長時間にわたっての振動は腰に負担がかかりやすい状態です。クッションや座席の改善などにより振動を減らす対策をしましょう。

作業管理の改善

作業管理の改善には、以下の6項目があります。

  • 作業を楽にする(自動化、省力化)
  • 適切な姿勢で作業する(作業姿勢、動作)
  • 作業の実施体制を見直す(実施体制)
  • 作業のマニュアルを作る(作業標準の策定)
  • 休憩や作業量を適切にする(休憩・作業量、作業の組合せ)
  • 作業に適した服装にする(靴、服装)

それぞれ具体的に解説していきます。

まず、1つ目は【作業を楽にする】です。腰に負担がかかるような重いものを取り扱う作業、または不自然な姿勢を伴う作業では、可能な限り機械による作業の自動化を行うのがおすすめです。

難しい場合は台車や簡単な補助機器を使って、作業者の負担を減らす省力化を行うといいでしょう。

続いて、2つ目は 【適切な姿勢で作業をする】です。作業するときは、対象物にできるだけ身体を近づけて作業しましょう。どうしても不自然な姿勢を取る必要がある場合は、前かがみやひねるなどの負担のかかる姿勢と時間を減らすようにします。

作業台や椅子は、ひじの曲げ角度がおよそ90度になる適切な高さに調整すると、身体への負担が少なくなります。 

3つ目は 【作業の実施体制を見直す】です。作業時間、作業量などを設定する際は、以下のものを確認して適切な実施体制を検討します。

  • 作業をする人数
  • 作業内容
  • 作業時間
  • 重量
  • 自動化・省力化の状況

このときに、腰に過度の負担がかかる作業は、無理に1人でさせないことが大切です。

4つ目は 【作業のマニュアルを作る】です。作業の姿勢、動作、手順、時間などについて、作業の標準を策定します。作業標準は、作業者の特性や技能レベルなどを考慮して定期的に見直す必要があります。

5つ目は 【休憩や作業量を適切にする】です。仕事中は適宜、休憩時間を設けて、姿勢を変えるようにしましょう。

夜勤や交代制勤務、不規則な勤務は、昼間の作業量を下回るように配慮し、休憩や仮眠が取れるようにする必要があります。過労を引き起こすような長時間勤務は避けましょう。

6つ目は 【作業に適した服装にする】です。作業時の靴は、足に合ったものを使用しましょう。ハイヒールやサンダルは使用してはいけません。作業服は、伸縮性があって動きやすいものを使用しましょう。

腰の保護ベルトは、個人ごとに効果を確認した上で、使用するかどうか判断するのがおすすめです。

作業者の健康管理

作業者の健康管理に関しては以下の2つがあげられます。

  • 健康診断を受診する
  • 職場でストレッチする

まず、健康作りのために健康診断を受診することは欠かせません。常に腰への負担がかかる作業の場合は、配置時とその後6カ月以内に1度健康診断をしてください。

健康診断の結果をもとに、睡眠改善や保温対策、運動習慣の獲得、禁煙、健康的なスト レスコントロール等の生活習慣の改善を行うことも大切です。

また、職場でストレッチをおこなうことも効果的です。ストレッチを中心とした、腰痛予防体操を取り入れましょう。

腰痛による求職者が職場復帰する際に気をつけること

腰痛で休職していた人が復帰する場合は、主治医や産業医などの意見を聞いて重量物の取り扱いなどの作業方法、作業時間の調整など必要な措置をとりましょう。腰痛は再発する可能性があるため、再発しないように十分な対策がのぞまれます。

また腰痛を発症させないために、職場復帰にあわせて労働衛生教育をおこないましょう。

  • 腰痛が発生している作業内容・環境、原因などを確認
  • 腰痛発生要因の特定してリスクの見積もりをおこなう 
  • 腰痛の発生要因を回避、軽減するための対策
  • 腰痛予防体操やストレッチをおこなう

作業の種類や場所ごとに、腰痛の発生に関与する要因についてリスクアセスメントを実施し、リスクの大きいものから優先的に対策を行います。PDCAサイクルを回し、継続的・体系的に腰痛予防に取り組むことが大切です。

作業別の腰痛予防対策4選

作業別の腰痛予防対策を紹介していきます。

重量物取り扱い作業

重量物の取り扱い作業については、機械による自動化や台車・昇降装置などの使用による省力化を図りましょう。

機械を使わず人の力によってのみ作業をする場合の重量は、男性(満18歳以上)は体重のおおむね40%、女性(満18歳以上)は、男性が取り扱う重量の60%程度としましょう。それ以上の重さを超える場合は、身長差の少ない2人以上で、適切な姿勢で重量が均一にかかるように注意して作業を行います。

また、荷物は適切な材料で包装し、確実に持つことができるようにし、取り扱いやすくしましょう。重量や重心の偏りはできるだけ明示しましょう。

立ち作業

立ち作業の時は、おじぎや反返りに近い不自然な姿勢での作業は控えてください。作業機器や作業台は、作業者の体格を考慮して配置しましょう。足台や椅子を利用することも効果的です。

また、他の作業を組み合わせて、長時間立ったままでの作業を避けましょう。1時間に1、2回程度の小休止や休息を取り、屈伸運動やマッサージなどを行うのがおすすめです。

床面が硬い場合は、立っているだけでも腰に負担がかかります。そのため、クッション性のある靴やマットを利用して、負担を減らすようにしてください。

座り作業

椅子は以下の点に気をつけて、作業者の体格に合ったものを使用してください。

  • 座面の高さ
  • 奥行きの寸法
  • 背もたれの寸法・角度
  • 肘掛けの高さ

座り方は椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支え、履物の足裏全体が床に接する姿勢が基本です。必要に応じてクッションや足台を活用してみてください。不自然な姿勢での作業とならないように、作業対象物は、肘を伸ばして届く範囲内に配置しましょう。

また、床に座って行う作業は、股関節や仙腸関節(脊椎の根元にある関節)などに負担がかかるため、できるだけ避けるようにしましょう。

車両運転等の作業

以下のような車両に乗る作業の場合は、長時間運転により腰痛が発生しやすくなります。

  • 建設機械
  • フォークリフト
  • 農業機械
  • トラック
  • バス
  • タクシー

そのため、長時間運転する場合は座席の改善や、運転時間の管理に注意し、適宜、休憩を取るようにしましょう。連続運転時間では4時間を超えないようにしてください。

もし、長時間運転した後に重量物を取り扱う場合は、小休止や休息、ストレッチを行った後に作業をするようにしましょう。

まとめ

腰痛は業務上疾病の労働災害で最も多く、 発症により労働の生産性を低下させてしまいます。腰痛は年齢や性別の関係なく、日頃から正しい知識に基づいた対策が必要です。

腰痛が起こる原因のひとつに腰椎の機能障害があります。適切な作業姿勢を知り、腰痛体操を行って、腰に負担がかからないようにしましょう。

また、腰痛の中には早めに病院受診をした方がよい腰痛があります。注意が必要な症状がみられたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。有効な腰痛防止対策は職場によって異なります。定期的にチェックしながら、見直しするのがおすすめです。

予防は治療に勝ります。職場での腰痛を防止して、安全で健康な職場を目指しましょう。

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